| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-443 (Poster presentation)
台湾で初記載された外来種ヤンバルトサカヤスデ(Chamberlinius hualienensis Wang,1956)は,秋の繁殖期に異常発生して人に不快性被害を及ぼす.本種は1983年に沖縄本島で確認された後,南西諸島を北上し,九州や四国,本州にも生息地域を拡大している.静岡県内では2002年頃より静岡市で異常発生が問題となっていたが,2008年度から県内の保健所,市町関係課に発生状況の聞き取り調査を行なった結果,2009年には浜松市や伊豆半島の市町(2009),東伊豆町(2010),藤枝市(2011)で新たに異常発生の情報が寄せられるなど,県下全域に分布域が拡大する傾向が認められた.
全国各地に生息するヤンバルトサカヤスデの侵入経路や分布状況を把握する一助として,ミトコンドリアDNAの塩基配列の変異に基づいた分類を試みた.COI領域の一部である240塩基対に注目し,静岡県の他,沖縄県,鹿児島県,高知県,東京都(八丈島)で採取した42地点413匹のヤスデの塩基配列の変異を観察した結果,6ヶ所で塩基置換による多型が見つかり,これにより4つのDNA型(a,b,c,dタイプ)に分類できた.地域的にみると,ヤンバルトサカヤスデが最初に発見された沖縄県では4つ全てのDNA型が検出されたのに対し,その他の都・県では単一のDNA型を示す地点が多く,このことから,ヤンバルトサカヤスデは,多様なDNA型をもつ沖縄県から各地へ広まった可能性が示唆された.ただし静岡県内では,伊豆半島東部においてdタイプ単一の個体群が占めるのに対し,静岡市内はaタイプ単一やa,b,cタイプ混合個体群など,調査地点によって遺伝子タイプに様々なパターンがみられたことから,複数の侵入・拡散経路が存在すると考えられた.