| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-445 (Poster presentation)

熊本県宇土半島で捕獲された外来種クリハラリスの腸管内蠕虫類の寄生状況

*宮部真吾,横畑泰志(富山大院・理工),安田雅俊(森林総研・九州)

クリハラリス(Callosciurus erythraeus)は中国〜東南アジア原産の外来性齧歯類であり、熊本県宇土半島では1990年代後半から定着している(安田、2012)。日本における本種の寄生蠕虫(多細胞性の内部寄生虫)の調査には松立ら(2003)、Sato et al.(2007)などがあり、原産地に記録のある種や新たに見つかった種が報告されている。今回は2010年10月に宇土半島で捕獲された本種55個体の腸管内を検査した。

その結果、25個体からStrongyloides callosciuri(クリハラリスに固有)、Rictularia cristata(日本産野ネズミに普通に寄生) など114虫体、3属3種の寄生線虫類が検出され、いずれも公衆衛生上問題になる種ではなかった。107虫体(93.9%)をS. callosciuriが占めていた。一般化線形モデルを用い、S. callosciuriの宿主ごとの虫体数を目的変数、各宿主の計測値(頭胴長、尾長、前足長、後足長、耳介長、体重、水晶体重量)、性、成熟度(Tang and Alexander(1979)を参考に、頭胴長が20cm以上を成獣)を説明変数、AICを指標として最適モデルを作成した。最適モデルの説明変数は後足長(短いと減少、0.05<P<0.1)と性(オスで増加、P<0.01)となった。クリハラリスのオスは行動圏を他の個体と重複させているが、繁殖メスの行動圏は排他的である(Tamura et al.、1988)。宿主の性が有意な因子になった理由は、このような雌雄の行動圏の違いが他個体との接触機会の違いに繋がり、蠕虫類の感染機会にも影響したと考えられる。


日本生態学会