| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-449 (Poster presentation)

希少樹種ハナノキ自生地域への近縁外来種アメリカハナノキの植栽混入と侵入の実態

*金指あや子(森林総研), 菊地賢(森林総研), 大曽根陽子(首都大), 澤田與之(シデコブシと自然が好きな会), 野村勝重(みどりの会)

落葉性高木のハナノキ(ムクロジ科カエデ属)は、日本固有の東海丘陵要素植物である。近年の土地開発による自生地の消失・分断化が進み、現在、絶滅危惧種(II類)に指定されている。雌雄花や紅葉が美しいハナノキは街路樹などにしばしば植栽されるが、植栽個体の中に近縁外来種であるアメリカハナノキとみられる個体が混入している事例がみられる。近縁外来種による侵入は、絶滅危惧種の生存に深刻な影響を及ぼす可能性がある。そこで、本研究では、ハナノキが分布する長野県南部・岐阜県南部・愛知県北部の地域(恵那山を中心とする半径60km内)を踏査し、街路樹等としてハナノキが植栽されたカ所と外来種の混入の現状を明らかにした。

踏査対象地域内の26カ所でハナノキの植栽を確認した。これらのうち、葉の形態的特徴をもとにアメリカハナノキタイプと判定された個体が混入している植栽地は9カ所であった。アメリカハナノキタイプが混入している植栽地と自生地/自生個体との距離が最も近いのは豊根村の1.9kmであった。その他、5km以内が飯田市・恵那市に2カ所、5-10km内が恵那市・可児市に3カ所、10km以上が瀬戸市・豊田市に3カ所であった。また、恵那市では植栽場所に、土岐市では近接する湿地において、アメリカハナノキタイプの実生の発生または稚樹の定着を確認した。今後、種間雑種の形成や雑種の識別、外来種や雑種の実生の侵入性を評価する必要がある。さらに、ハナノキ種苗の生産流通における外来種混入の経路を明らかにし、近縁外来種の非意図的混入を防ぐ対策を講ずる必要がある。


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