| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(口頭発表) B1-01 (Oral presentation)
2011年3月11日に発生した巨大な地震と津波によって、南北70kmにわたって砂浜海岸が卓越する仙台湾岸も著しく攪乱された。元来この海岸域では、砂浜海岸エコトーンとして立地と植生(土地利用)の間にカテナ構造が認められ、住民の暮らしの履歴を織り込んだふるさとの景観が存在していた(平吹ほか、2011)。大震災に伴う攪乱と自律的再生の様態、そして持続可能な地域づくりを目指す復興事業も、この枠組みに則って調査・立案を進めることが得策である。
仙台市南蒲生地区に設置した砂浜海岸エコトーンモニタリングサイト(38°14´N、140°59´E)で実施してきた生態調査から、攪乱の実態とその後の植物・植生のすばやい再生に関して、興味深い現象が把握されつつある(富田ほか、2012、2013)。それは生態学のみならず、統合的な地域管理やバイオシールド(佐々木ほか、2013)という視座から、各地の復興・事前復興事業、そして減災・防災施策を進める上で、重要な知見を多分に含んでいる。
一方、砂浜海岸エコトーンの中核をなす砂丘・後背湿地領域では、丘陵地の鉱質土壌や津波堆積物、瓦礫破砕物を用いた盛土が、かつてない広がりと速度で造成されている。再生途上にある野生動植物やハビタットに対する配慮は、極めて希薄である。
こうした盛土は、砂丘を代表する在来種を埋没・壊滅させ、自然度の低い、異質な植生・立地を生み出している。わずか3・4年で仙台湾岸の砂丘を埋め尽くしてしまう現行の復興工事は、未曾有の生態系破壊に至る可能性が高い。枯死木チップの被覆や排水溝の掘削、除草といった施業のあり方よりも、盛土の素材や形状、配置、造成期間(順序性)といった抜本的な工法に対して、砂浜環境と海岸エコトーンの諸原理を尊重した検討を加えるべきである。