| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(口頭発表) B1-03 (Oral presentation)
気候変動への生物の応答を理解するために様々な空間分布モデルが用いられているが、その多くでは生物が常に気候ニッチを維持しているという「気候ニッチの保守性」が前提となっている。しかしながら、種によって分布域の北上程度とそれに伴うニッチの保守性の程度は大きく異なり、その原因については議論が続いている。本研究では、生物によるもう一つの気候変動に対する応答、フェノロジー変化によってどの程度気候ニッチを保守できるかが、種による分布域の北上程度を説明するのではないかという仮説を検証した。英国に自生する約300種の植物を対象に、1960年代からの開花日と分布域の変化を定量化したところ、(1)多年生または開花日の気温に対する反応が弱く時間差がある種において、特に開花時期の気温が上昇している(フェノロジー変化によって気候ニッチを保守できていない)、(2)フェノロジー変化によって気候ニッチを保守できていない種は分布域の北上程度が大きい、(3)結果として、フェノロジー変化と分布域変化それぞれによる気候ニッチの保守性は相補的な関係となっている、ことが明らかになった。この結果は、気候ニッチの保守性が高い種でも、フェノロジー変化によって気温上昇に対応することで、分布域を北上させる必要がないかもしれないという可能性を示している。