| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) B1-13 (Oral presentation)

インターネットコミュニティーの外来魚類モニタリング機能

*宮崎佑介(神奈川県博),村瀬敦宣(青年海外協力隊),椎名雅人(宇和島水産高),直江憲一,中城亮祐,本多順一,山出潤一郎(ズカンドットコム),瀬能宏(神奈川県博)

生物多様性モニタリングの実施にあたり、専門家だけでなく、一般市民の参画が得られることによって、生物分布データの大規模かつ持続的な取得が可能になることが期待されている。本研究では、2002年から運営が開始された「WEB魚図鑑」に設置されているコミュニティ「さかなBBS」の2002年1月から2012年12月までの全投稿データ85,453件を対象に、一般市民による外来魚類の採集・観察記録を抽出した。

その結果、画像付きの投稿は37,609件(44.0%)、外来魚類の画像付きの投稿は681件(0.8%)であった。ここから外来魚類の分布データとして569件472ロットが抽出された。この外来魚類の分布データの内訳は、海水魚類はわずか17件12ロット(海水魚類の写真付投稿のうちの0.0%)であったが、一方の汽水・淡水魚類は552件460ロット(淡水魚類の写真付投稿のうちの20.6%)と、汽水・淡水魚類の方が圧倒的に件数・割合ともに高かった。また、既知の国内・国外外来種の投稿だけでなく、これまでに国内の自然水域における導入が知られていない外国産種の投稿が9種(海水魚類4種、汽水・淡水魚類5種)、これまでに導入が知られていなかった地域からの投稿(すべて淡水魚類)が18ロット含まれていた。

本研究によって、インターネットコミュニティーを介した一般市民による外来魚類の導入についての監視機能は、汽水・淡水魚類でより強くはたらくことが示唆された。また、海水魚類についても、新たな外来種の侵入を監視する機能があると考えられた。


日本生態学会