| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) C1-07 (Oral presentation)

南米アンデス山系の氷河後退域におけるモレーン地形に着目した植生の発達

*三村 琢磨(筑波大・生物学類), 廣田 充(筑波大・生命環境系), 吉田 圭一郎(横国大・教育人間), 長谷川 裕彦(山岳地理学研究所), 水野 一晴(京都大・アジアアフリカ地域研究)

今日の地球温暖化の影響として熱帯高山帯における急激な氷河後退がしられている。しかし、この氷河後退が周辺の生態系に及ぼす影響については、十分に分かっていない。氷河後退は植生を中心とした生態系全体を大きく改変する可能性が高いため、我々は2012年より南米アンデス山系の氷河後退域における総合調査を開始した。2012年の調査では、氷河後退域に特有のモレーンという巨大な地形に着目した植生調査を行い、出現種や各種の出現範囲などを報告してきた(吉田2012)。しかしながら、モレーン上以外の広い平坦な部分における植生に関する情報は無く、当該地域の植生構造の全貌解明には至っていない。そこで本研究では、これまで調査を行っていない部分における植生状況を明らかにすることを目的とし、氷河後退後に最初に出現する先駆種(Senecio rufescens)についても、遺伝子解析と合わせて調査を行った。

ボリビアのアンデス山系のチャルキニ峰(5392m)西カールのモレーン間の平坦部分を対象として、ラインコドラート法による植生調査を行った。次に、モレーン上部と底部の複数箇所の調査区内に出現したS. rufescensの個体数と草丈を測定した。さらに、異なる標高数箇所(4300m-4900m)でサンプリングを行い、葉緑体DNAを用いた系統解析を行った。植被率と種数は標高の上昇とともに減少していく傾向がみられた。S. rufescensについては、モレーン上に多く存在しており、これらはモレーン上部の環境を好む植物であることが示唆された。遺伝子解析では明確な違いは見られず、現地の個体間では遺伝子流動が活発に行われている可能性が示された。


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