| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) D1-05 (Oral presentation)

移動速度と視力の関係: Leuckart's Lawの理論的研究

*里居伸祐, 巌佐庸(九大・理)

脊椎動物における眼の進化は様々な要因に影響を受けていると言われているが、その中の1つに生物の移動速度がある。移動速度の速い生物は、障害物回避や餌の取得の際より遠くから対象物を認識する必要があるため、比較的高い視覚の能力をもつと考えられる。大きなサイズの眼をもつことは視覚能力の向上につながるため、移動速度の速い生物は大きな眼をもつと考えられ、この法則はLeuckart's Lawと呼ばれている。近年この法則について実際に眼の大きさと移動速度を測定して確かめた研究がなされた。Hall and Heesy(2011)は鳥類の飛行速度について測定を行い、眼の大きさと飛行速度には正の相関は見られないとした。また、Heard-Booth and Kirk(2012)は哺乳類の最大速度について測定を行い、眼の大きさと飛行速度には正の相関が見られるとした。上記のように、Leuckart's Lawが実際に正しいかどうかは見解の一致を得ておらず、どのような条件で成り立つのかなどはまだわかっていない。

本研究では、障害物量や餌の量に着目し、Leuckart's lawがどのような条件で成立するのかを調べるため、計算機シミュレーションを行った。具体的には、障害物の量や餌の量の異なる様々な環境下で、移動速度や見える距離をパラメータとしてもつ生物を動かし、衝突回数や餌の獲得量の振る舞いを調べた。その結果、採餌に関しても障害物回避に関しても、同一の障害物量、餌量環境の生物であれば、移動速度が速ければより高い視覚能力をもつだろうというLeuckart's Lawと同じ傾向が見られた。しかし、障害物量、餌量環境の異なる生物では、単純にLeuckart's Lawは成立せず、移動速度の速い生物がより小さな視覚能力をもつことも起こりうるということがわかった。


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