| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(口頭発表) D1-09 (Oral presentation)
餌探索をする動物は過去の経験に基づき行動を変化させていることが考えられる。しかし、実際に野外の大型動物において、餌遭遇の経験に基づいた採餌行動の変化について明らかにした研究は少ない。ナンキョクオットセイは、パッチ状に分布する餌生物を利用する海洋大型動物である。本研究では、ナンキョクオットセイが過去どれくらい前の時間スケールでの餌遭遇の経験に基づき行動を変化させているのかを明らかにすることを目的とした。
調査は2009年1-3月に亜南極の島のサウスジョージア・バード島にて、ナンキョクオットセイ10個体を対象に実施した。オットセイの下顎に装着した加速度記録計から餌遭遇イベントの指標として口の開閉を検出し、背中に装着したGPSと地磁気加速度記録計から遊泳軌跡を再構築した。
オットセイの潜水は多くの割合で連続的に生じていた。口の開閉の記録から単位時間あたりの餌遭遇率を算出したところ、同じ連続潜水内のそれぞれの潜水の餌遭遇率は大きくばらついていた。そのため1回の潜水の餌遭遇率だけから連続潜水の終了あるいは続行を説明することは難しい。一方、過去5-20回の潜水の餌遭遇率の平均を計算すると、それらを説明できると考えられる結果が得られた。連続潜水内で平均餌遭遇率が低下すると連続潜水を終了する傾向を示した。また連続潜水内のある1回の潜水の餌遭遇率が低い時でも、その潜水より過去の平均餌遭遇率が高ければ潜水を続ける傾向が見られた。以上のことから潜水後のオットセイの行動は少なくとも過去複数回の潜水中における餌遭遇の経験の影響を受け次の行動を決定していた可能性が示唆された。