| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) D1-11 (Oral presentation)

円網性クモに見られる体色変異と捕食成功の関係

中田兼介(京都女子大)

動物の体色には種間コミュニケーションを含む様々な機能がある。一方で、体色には種内で変異が見られる場合もあり、体色の種内変異とその機能との関係は動物の生態・進化を考える上で重要である。

さて、円網性クモにしばしば見られる目立つ体色は餌誘因機能を持つことが知られているが、種内で体色変異を示す種で体色と餌誘因の関係を調べた研究は少ない。そこで本研究では、腹部背面が銀色と黒色の二色からなり、その比率が個体間で大きく変異するギンメッキゴミグモCyclosa argentenaolbaを用いて、野外での餌捕獲率の観察と、クモの餌昆虫であるショウジョウバエによる異なる体色を持つクモに対する選択実験(T字迷路を用いた)の2つを用いて上記課題を検討した。

野外観察では、腹部背面に占める黒色部の割合(黒色率と呼ぶ)が高いものほど、網面積当たりの餌衝突数が大きいという結果を得た。選択実験では、ショウジョウバエはより黒色率の高いクモを配置したT字迷路の出口を有意に多く選択した。これらの結果は、ギンメッキゴミグモにおいて、銀色部の大きな目立つ体色を持つ個体は餌捕獲の点で不利であることを示唆している。

このような体色による餌捕獲数の違いが、黒色個体が餌を誘引しやすいために生じているのか、またはより目立つ銀色個体が餌に発見されやすく回避されやすいために生じているのかを検討するために、T字迷路の片方の出口に様々な体色のクモを配置し、もう片方に何も配置しない状態で、ショウジョウバエに選択させたところ、はっきりした結果は得られなかった。異なる体色を持つ個体の間で餌捕獲数が異なる具体的なメカニズムの解明は今後の課題である。


日本生態学会