| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) D1-13 (Oral presentation)

オタマジャクシは群れる相手を選ぶのか?:遺伝的背景を考慮した集合行動の解析

*長谷和子,安部真人,嶋田正和(東大院・広域ステム)

カエル類や魚類の幼生,鳥類など多くの動物群で「群れ」という集団行動が知られている.捕食者からの回避,探索効率の向上など,群れの構成員すべてが利益を得るこの行動は,社会的階層を伴わない協力行動の1つと見なす事ができる.多数の個体が集合する事により作り出される「群れ」ダイナミクスについての力学的アプローチの研究は,近年盛んに行われている.しかし「群れ」の数理モデルでは集団を構成する個体はすべて均質であることがしばしば仮定されており,集団内の血縁関係が個体間相互作用にどの程度関与するのかについての研究はまれだった.

我々は,血縁関係や遺伝的基盤がオタマジャクシの「群れ」=集合性の強さをどこまで規定するか検証するため,個別に育てたヒキガエルの幼生を,兄弟内/間,個体群間,亜種間,種間,といった組み合わせで混合した時,集合性の強さにどの程度の差が生じるのか,最隣接距離法(the nearest neighbor analysis , Clark & Evans 1954) に基づいた画像解析により,定量的評価を行った.3系統(Bufo japonicus japonicus; B. japonicus formosus; B. gargarizans miyakonis)18卵塊 (母系) を用いて68の組み合わせで行動実験を行った結果,遺伝的距離 (mtDNA pairwise distance) と集合性の強さの間には,種内では相関が認められなかったが,種間レベルでは負の相関が認められた(r = 0.297, p = 0.014).本発表では,脊椎動物の血縁認識との関連が注目されているMHC遺伝子(class II exon ハプロタイプ相同性)と集合性の強さとの関係についても報告する.


日本生態学会