| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) D2-11 (Oral presentation)

外来種スイセンハナアブの色彩多型:ヨーロッパと日本の比較

須島充昭(東大・総合文化)

スイセンハナアブMerodon equestrisはヨーロッパ原産のハナアブで、各体節の毛色が、黄色、オレンジ色、黒色のいずれかであるが、その組み合わせが個体によって異なるため様々な横縞の色彩パターンが見られる。これは、同様の色彩パターンを持つマルハナバチ類に擬態しているものと考えられている。スイセンハナアブの色彩多型は、古くは大まかに5型程に識別されていたが、Conn(1972)はイギリスの個体群に34の色彩型(色彩に関する遺伝子型)を認めた。また、Conn(1976)は本種の自然分布域の一部と推定されるピレネー山脈の個体群における色彩型を記録した(イギリスの個体群は、ヨーロッパ南部からの侵入個体群と推定されている)。

スイセンハナアブは過去数十年の間に、人為を介して東日本にも侵入、定着している。本州における初期侵入地は神奈川県及び東京都と推定され、そこから北関東を経て、現在では東北へも分布を広げている。演者はこれまでに横浜、東京、埼玉、仙台にそれぞれ一つずつ調査地点を定め、5年間(2009-2013)に本種を726個体(横浜281、東京227、埼玉38、仙台180)捕獲した。今回これら日本の個体群の色彩型を上記のイギリスの個体群と比較したところ、イギリスで記録されている34型のうち、18型程が日本でも見られることがわかった。色彩型数は移住の過程で減少したといえ、日本における初期侵入地(関東の3地点)と最近分布を拡大したと考えられる地域(仙台)を比較した場合にも、後者では色彩型数の減少傾向が認められた。こうした変化の要因の一つは、移住や移動の過程で生じるランダムで確率的なものであると推定されるが、地域のマルハナバチ相に適応した結果である可能性についても考察する。


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