| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(口頭発表) D2-12 (Oral presentation)
植食性昆虫の食草選択と個体群制御のメカニズム解明は、古くから生態学における重要なテーマである。しかし、農業現場で問題となる多様な害虫に対して手軽に応用できるほどの普遍的知見は揃っていない。本研究では、サツマイモの世界的重要害虫で植食性ジェネラリストであるイモゾウムシが、なぜ子の発育パフォーマンスの低い食草で高密度になるのかを調査した。具体的には、野生のヒルガオ科食草2種のうち、グンバイヒルガオでは高密度になるのに対しノアサガオでは低密度にとどまる理由について、以下の4点を検討した;1)母親による食草選択、2)子の発育パフォーマンス、3)潜在的競争者密度、4)寄生蜂密度。室内実験の結果、母親の積極的な食草選択行動は観察されなかった。卵の1か月後の生存率(蛹・幼虫数)は、野外でよく利用されるグンバイヒルガオで有意に低かった。潜在的競争者サツマイモノメイガの密度は、イモゾウムシの密度が低いノアサガオで有意に高かった。しかし、イモゾウムシはノメイガと共存している方が高い生息密度を示したことから、ノメイガとの資源競争は重要でないと考えられた。一方、野外における寄生蜂密度はグンバイヒルガオで有意に低かった。総合すると、グンバイヒルガオがイモゾウムシにとって有利になる要因は寄生蜂密度の低さのみであった。グンバイヒルガオはイモゾウムシに産卵食草として好まれるわけではなく、幼虫の発育パフォーマンスも低い。しかし、天敵が少ないenemy free spaceであるため結果的にイモゾウムシが高密度になっていると考えられた。