| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) E2-02 (Oral presentation)

寄生者感染から見えてくる離合集散の進化:血縁選択モデルによる解明

*入谷亮介 (九大・理・生物), Pierre-Olivier Cheptou (CEFE, France), Sylvain Gandon (CEFE, France), Sebastien Lion (CEFE, France), Simon Fellous (INRA, France) 巌佐庸 (九大・理・生物)

生物はグループ構造をもち、その中で個体間の相互作用がおこる。特に、個体間の変異が見られ、かつ空間的な移動分散やメンバーの交換が制約されている場合、社会性が成立する。したがって社会性はほぼあらゆる生物種に見られる普遍的な性質であり、社会性が成立する生態学的なシナリオに関する仮説は数多く提唱され、検証が行われてきた。

社会は「群れる」ことから興るが、群れることが多くの不利益を生み出すこともある。その一つが寄生者感染や伝染病である。寄生者感染もあらゆる生物に見られる現象であり、社会性を持つ生物においても決して例外ではない。たとえば、社会的な相互作用ネットワークが密に構築されている場合、接触感染能をもつ寄生者が水平感染する可能性は高いと考えられる。特にこういった水平感染が身内で起こるのは進化的に不利であり、それを回避する形質が進化するであろうと予想される。その1つは、移住してしまうこと、つまり移動分散であろう。それでは、感染している個体と健康な個体、どちらが移住するのが適応的なのであろうか?

本講演では、グループ内の寄生者の水平感染を回避する1つのメカニズムとしての移動分散の適応進化を、その表現型可塑性(健康個体の移住傾向、感染個体の移住傾向)の進化ダイナミクスから解析する。それによると、移住傾向の表現型可塑性の獲得が、集団内に遺伝的分岐と多型の共存を引き起こすことが示された。


日本生態学会