| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) E2-05 (Oral presentation)

異所的種分化と種形成速度の地理的パターン

*山口諒(九大院・シス生), 巌佐庸(九大・理)

異所的種分化は最も一般的な種分化様式であり、地理的隔離によって祖先種集団が複数に分断されたのち、それぞれの集団が独自の進化を果たして別種が生じたとされる。本研究では、地理的隔離が不完全で、集団間に低頻度の移出入と交配を考慮する数理モデルを構築した。また、交配の不和合性は各集団内における多くの中立突然変異の蓄積によるものとし、集団間で異なる不和合性遺伝子の数を遺伝的距離と定義した。遺伝的距離がある閾値に到達した際に集団間で種分化が起こったとみなし、種分化までの待ち時間を定式化した。その結果、移出入の増加は遺伝的距離の低下を招き、種分化までの待ち時間を遅らせた。しかし、移出入が種分化後も続くと仮定すれば、移出入は新たな種が他の隔離集団に定着する機会を与える。つまり、移出入機会の増加は種の新たな分集団が形成されるまでの間隔を短縮し、新たな異所的種分化の起因となる。したがって、ある中間の移住率の場合に、集団間の種形成速度は最大化されることが予測された。本講演ではさらに、集団数や集団間の構造が種形成速度に及ぼす影響についても議論する。


日本生態学会