| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(口頭発表) E2-07 (Oral presentation)
マレー半島基部を南限として,インド東アッサム地方からインドシナ半島全域〜中国雲南省南西部まで分布するキタブタオザル (Macaca leonina;以下,キタブタオ) について,広範な採材を行い,mtDNA塩基配列(Cyt b遺伝子からD-loop前半までの約1.8kb)から地域集団の系統関係を推定した.また,Zieglerら(2007)のデータセット(Cyt b遺伝子567bp)を加え,ブタオザルグループの系統関係の再構築を行い,分岐シナリオを推定したので,あわせて報告する.分子系統樹では,ボルネオのミナミブタオザル(以下,ミナミブタオ)が最初に分岐し,次に,マレー半島およびスマトラのミナミブタオのクラスターとキタブタオのクラスターがそれぞれ分離した.タイ東部およびメコン川西岸由来のキタブタオはマレー半島/スマトラのミナミブタオのクラスターに含まれた.シシオザルはキタブタオのクラスターに含まれた.マレー半島基部(ミナミブタオとの分布境界付近)のキタブタオザルにミナミブタオのmtDNAをもつ個体が数例見つかった.ブタオザルグループの分子系統樹は,先行研究と概ね一致したが,本研究のタイ東部〜メコン川西岸およびタイ南部のキタブタオの分析結果から,キタブタオとミナミブタオの間で2回のmtDNAの浸透があったことがわかった.ブタオザルグループの地理的放散についての2つの分岐シナリオを紹介したい.