| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(口頭発表) E2-10 (Oral presentation)
適応放散は、生物が多様性を急速に増大させるホットスポットであり、古くから進化生態学において注目されてきた現象である。適応放散の際には、生態適応に関与する様々な形質の多様化が認められ、ニッチ分化に関連したリネージの増加、すなわち生態的種分化が連続的に起こっていると予想されている。このような生態適応形質とは別に、特に適応的用途のない、いわゆるニュートラルな形質が適応放散の途上でどのようにふるまうかということに関しては、これまであまり注目されてこなかった。インドネシアを中心とした東南アジアの島嶼に広く生息する食植性テントウムシHenosepilachna diekeiは、主にシソ科とキク科、およびキツネノマゴ科の食草に特殊化することで、ごく最近になって適応放散した種である。これらの多様な集団と近縁種について、我々が種を識別する際に最も重要な指標とするオス交尾器を中心とした形態比較を行い、その系統関係と食性の分化、そして生殖隔離の強さとの関係を調査した。この結果、交尾器などの形態形質には集団間で違いが認められるものの、その違いは利用する食草(=ニッチ)や生殖隔離の強さとは無関係であり、単純な遺伝距離に相関することが示された。このことから、適応放散の途上においては適応的形質とそうでない形質の間で分化の程度に様々な相違が生じており、このことがリネージの融合や分離を繰り返すグループにおいてevolvabilityを供給しているものと考えられる。