| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(口頭発表) E2-11 (Oral presentation)
Buchnera(ブフネラ)はアブラムシの共生微生物であり,植物篩管液からの必須アミノ酸合成とアブラムシ体内の窒素リサイクリングの役割を担っている。アブラムシの栄養代謝は排出される甘露の質に反映されるので,甘露の排出回数もアブラムシの生理状態を表していると考えられる。アリ随伴下のアブラムシの甘露排出回数は非随伴下のものに比べて非常に多いことから,随伴アリによる甘露要求はアブラムシ自身の栄養代謝だけではなく,Buchneraのアミノ酸合成や窒素リサイクリングにも大きな負荷をかけていると予想される。このことから,アリ共生型アブラムシとBuchneraの共進化は,非共生型アブラムシに比べて,より密接に進行してきたと考えられる。本研究では,Tuberculatus属アブラムシ23種を対象にしたBuchnera分子系統樹を用いて,アリ共生型アブラムシ11種間と非共生型アブラムシ12種間のBuchneraの遺伝的距離を比較した。分子系統樹はBuchneraの16S-rRNA遺伝子(1331bp)の部分的な配列(V1-3, V3-6, V6-8)とそれらを合計した全配列を基に作成した。その結果,部分的な配列V6-8と全配列の分子系統樹において,アリ共生型アブラムシ11種間のBuchneraの遺伝的距離は,非共生型アブラムシ12種間に比べて,有意に小さかった。アリ共生型アブラムシのBuchneraは種間で遺伝的分化の程度が低いことが示唆された。本講演では,アリ随伴以外にアブラムシの体色に関しても,Buchneraが関わっている可能性に言及する。