| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) H1-10 (Oral presentation)

東日本大震災の津波による擾乱から干潟ベントス群集はどこまで回復したか?

西田樹生,鈴木孝男,*占部城太郎(東北大院・生命)

南三陸から仙台湾にかけての沿岸地域には多くの干潟が存在し、それぞれ特有の生物群集を形成している。それらの干潟生態系の生物群集は、2011年3月に発生した東日本大震災とそれに伴う津波により撹乱を受けた。しかし、その撹乱の程度は干潟によって異なり、浸水高(押し寄せた津波の高さ)が高かった干潟ほど震災直後の出現タクサ数は減少し、震災前後での群集構造は大きく変化した(Urabe et al.2013: PLoS ONE 8(5): e62779)。本研究では津波による撹乱被害をうけたこれら干潟が震災後の足掛け3年間でどのような変化が生じているのか、またそれら干潟の生物群集は元の姿に回復しつつあるのかを検討した。

調査は宮城県塩竈市の桂島、利府町の櫃が浦、松島町の双観山、仙台市の蒲生干潟、亘理町の鳥の海、福島県相馬市の松川浦鵜の尾の6ヶ所で行った。各干潟について震災前と震災が発生した2011年、その後2012年と2013年の計4回、センサス調査を行い、出現タクサ数と各タクサの出現頻度を調べた。その結果、震災直後にタクサ数が著しく減少した干潟についても、震災後1〜2年間で出現タクサ数は急増し、種構成が元に戻る傾向がみられた。2013年の調査では、震災前よりも出現タクサ数が増加した干潟がみられ、個々の出現頻度については震災前よりも低いタクサも散見された。本発表では、生活型による回復速度の違いについても議論する。


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