| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(口頭発表) H1-12 (Oral presentation)
寄生者のうち生活環の中で自由生活を行う幼生ステージを持つ場合、幼生が他の捕食者の餌資源となり、食物網中でもう一つの摂食リンクを形成している可能性がある。本研究では、西シベリアの湿原生態系において高密度で生息するヨーロッパモノアラガイLymnaea stagnalisを第一中間宿主とする二生類吸虫Echinoparyphium aconiatumとPlagiorchis multiglandularisのセルカリア(自由生活形の幼生)を用いて、潜在的な捕食者によるセルカリア幼生の摂食量を推定した。
捕食者として、ミジンコ類、カゲロウ幼虫、イトトンボ幼虫、カメムシ類を用いた。これらに加えてE. aconiatumには微小貧毛類、P. multiglandularisには、カイムシ類、ヨコエビ類、等脚類も用いた。大型(体長0.32-0.47 mm)のE. aconiatumセルカリアでは、ミジンコ類、カゲロウ幼虫、小型カメムシ類による捕食は見られなかった。一方、微小貧毛類、カゲロウ幼虫、大型カメムシ類はE. aconiatumのセルカリアを摂食し、摂食速度は0.1 - 7.5/h/個体と、種によって大きく異なった。より小型(体長約0.27 mm)のP. multiglandularisセルカリアは、カメムシ類以外の捕食者に1.6 - 14.4/h/個体の速度で食べられた。捕食者による摂食の有無や摂食速度は、餌の嗜好性だけでなく、セルカリアと捕食者の相対的な大きさが影響している可能性が示唆された。