| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) H1-14 (Oral presentation)

タリアメント川氾濫原におけるタマリの生息場寿命と動物群集の関係

*竹門康弘,寺田匡徳,小林草平,兵藤誠,藤林恵.渡慶次睦範

河川の氾濫原に発達する多様な止水生息場(わんど、たまり等)は、区間全体の生物多様性を形成する役割を担っている。氾濫原におけるたまりは、本川との距離や比高に応じて、本川とつながる頻度が異なっており、これらが止水生息場としての多様性に結びついていると考えられる。著者らは本川と分離後に再度連結するまでの時間を「たまりの生息場寿命」と定義し、生息場寿命と動物群集の関係を調べてきた。本研究は、2013年7月に行ったイタリアのタリアメント川での現地調査から、止水生息場を本川からの比高の順に、本川(わんど)、低水たまり、準低水たまり、準高水たまり、高水たまりに区分し、各生息場の環境特性と動物群集の関係について分析した結果を報告する。

本川からの比高とともに、止水生息場の樹冠開空度は100%から20%に下がり、河床材料は礫から泥へと変わり、倒木等の有機物の要素によって微生息場の多様性は増加した。一方、平均水温や水温の変動幅は準低水または準高水たまりで最も高く、溶存酸素量はこれらで最も低く、比高に対して一山型となる関係を示した。低水たまりは本川と地下透水性が高く、高水たまりは斜面からの湧水供給があるため、このような関係になると考えられる。流水性の底生動物の種数は本川や低水たまりで最大で、比高とともに減少する一方で、止水性の底生動物の種数は比高とともに増加し高水たまりで最大であった。これに対して、魚類の種数や個体数は準低水や準高水たまりで大きかった。準低水や準高水のたまりでは全底生動物の種数が低かったが、これには低酸素や高温などの環境要因の悪条件と、魚類の捕食圧の2つの理由が考えられた。


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