| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-033 (Poster presentation)

タンポポ耐病性遺伝子(R-gene)の種間、集団間変異

*満行 知花(九大・理), 矢原 徹一(九大・理)

現在、日本には有性生殖を行う2倍体在来タンポポと外来種で無融合生殖を行うセイヨウタンポポとの雑種(3倍体または4倍体)が広く分布している。雑種は無性的に種子を生産しながらも稀に花粉を通じて在来種と戻し交配する事が可能なため、病原体に対する対抗進化の速度が速まるという有性生殖の利点が発揮されているかもしれない。この可能性を検証する第一段階として、耐病性遺伝子R-geneの多様性を調べた。

まず、GS FLX-tiを用いたESTライブラリ作成によって、2倍体在来タンポポで176個の候補R-geneを得た。次に2倍体在来タンポポ、雑種、セイヨウタンポポについて、レタスのNBS領域のプライマーを用いてPCR、クローニングを行い、732個の配列を得た。これらを近縁種レタスと比較した結果、レタスで知られている20個のRGCサブファミリーのうち14のサブファミリーがタンポポでも確認された。しかし、各RGCファミリー内ではレタスとタンポポとは配列が大きく異なっていた。さらに、タンポポ属のみで増幅する、タンポポ特有のサブファミリーも確認された。これらの結果は、タンポポ属においてタンポポ特有の病原体との共進化が起きている事を示唆している。次に、2倍体在来タンポポの地域集団間でR-geneの配列を比較したところ、地域特有のクラスターは認められず、地域を超えて多様な遺伝子が維持されていた。ただし、在来タンポポとセイヨウタンポポとが高いbootstrap値で異なるクラスターを形成した5つのうち4つは、雑種はセイヨウタンポポの配列を共有していた。さらに雑種は、計11個の特有のクラスターが認められた。つまり、雑種は2倍体在来タンポポで一般的なR-geneを必ずしも共有していなかった。雑種は、日本の病原体と共進化してきた在来タンポポの一般的なR-geneを持たない方が有利になっているかもしれない。


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