| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-043 (Poster presentation)

海岸生の希少植物バシクルモンの新潟県における個体群構造と生育特性

指村奈穂子(神奈川県自然環境保全センター), *澤田佳宏(兵庫県大・緑環境/淡路景観園芸学校), 大谷雅人(森林総研・林木育種センター), 横川昌史(大阪市立自然史博物館), 古本良(森林総研・林木育種センター)

バシクルモンは海岸に生育するキョウチクトウ科の多年草であり、北海道・青森県・新潟県の数ヶ所にのみ分布が知られている。本研究では、南限生育地である新潟県でバシクルモンの個体群構造と生育特性を明らかにすることを目的として、2013年にシュートの数とサイズおよび着花・結実状況の季節変化を追跡し、また、調査時にみられた訪花昆虫相を記録した。

シュート数、シュートサイズともに5~7月にかけて増加したが、7~9月にかけてはほとんど変化しなかった。ただし、一部の調査区において海岸清掃によりシュート数の減少が見られた。一般化線形モデルでは、植被率や植生高の大きい調査区ほどシュートサイズが大きいというモデルが選択された。他種による被陰のために光環境がよくない立地でシュートサイズが大きいことから、生産性の高いシュートからの資源転流が生じている可能性も考えられる。

調査期間中に観察したシュートのうち64%で着花が観察され、そのうちの48%が7月には蕾で、9月には91%のシュートで花が咲き終わって萎れていた。一般化線形モデルでは、植被率や植生高が大きい調査区ほど着花率が高いというモデル、および、サイズが大きいシュートほど着花率が高いというモデルが選択された。

開花期の6月下旬にはハナバチ類やチョウ・ガ類が訪花していたが、結実は全く認められなかった。一方で、発表者らの観察で北海道奥尻島では8月に結実が認められたため、新潟の個体群では、花粉制限や、残存クローン数の減少による繁殖成功度の低下などの要因により結実が見られない可能性がある。


日本生態学会