| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-045 (Poster presentation)
日本全国の浜辺には在来の野生ダイコンとしてハマダイコン (アブラナ科,Raphanus sativus var. raphanistroides) が生育し、日本の海岸植生を特徴づけている。ハマダイコンは、私たちにとってなじみ深い栽培ダイコンと同種だが、野生種であるために、それら栽培系統よりも豊かな遺伝変異を保有していると期待される。とくに、本種の幅広い分布域の中で気候条件も大きく変わるため、各地域の自生集団は、それぞれの歴史を反映した遺伝変異を有するだけでなく、自生環境に特異的な自然選択を経て形成された適応的変異も有しているとみられ、進化生態学・遺伝育種学面で有用である。そこで本研究では、日本列島に沿って設定した14自生集団より採集した種子を用いて共通圃場試験を行い、どのような形質にどのようなパターンの遺伝変異がみられるか検証した。試験においては、ダイコンに特徴的なシンク器官の成長や、越冬一年性であることから自生地適応の重要な駆動因子と想定される、生活史動態(成長から越冬、繁殖フェーズへの移行)に着目した。
共通圃場試験はチャンバーを用いた室内栽培試験と、全国3ヶ所の実験圃場を用いた野外試験で構成され、野外試験は秋期に播種して冬期と春期の2時期に分けて堀取り、形質測定に供した。測定データより、総バイオマス量、資源分配比、繁殖移行タイミングといったパラメータを集団、環境ごとに推定し、変異の多寡やその傾向を解析した。その結果、成長形質よりも繁殖関連形質のほうが強い遺伝支配を受けており、変異は生育環境に依らず地理的傾向を示すことが明らかとなった。また、成長に優れたのは必ずしも自生集団ではなく、シンク器官の肥大に乏しい地域もあることがわかった。