| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-092 (Poster presentation)
オニバスはため池などに生育する1年生の浮葉植物である。生育地の開発や水質汚濁などにより、個体群が減少・縮小し、環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧II類に指定されている。本研究は本種の保全計画の策定に資するため、種子の保存期間(0, 90, 180, 270, 360日)と保存温度(4, 20 ºC)、発芽時の光条件(明、暗)と温度条件(10, 15, 20, 25, 30 ºC)、種子の大きさ(0.5 cm以上1.2 cm未満、1.2 cm以上1.6 cm未満)が本種種子の発芽に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。インキュベーターでの発芽試験の結果、散布直後(0日間保存)は休眠状態にあることが示され、発芽率は4 ºCで90日間保存した種子において最も高くなった。保存期間が長くなると発芽率が低下し、二次休眠が誘導されたと考えられた。特に20 ºC保存において発芽率の低下が顕著であった。種子は明・暗条件どちらにおいても発芽したことから、本種種子の発芽に光は必須ではないと考えられた。発芽率は20, 25 ºCにおいて高く、それらが発芽に最も適した温度であることが示された。また、25, 30 ºCにおける発芽率は暗条件よりも明条件で高い一方で、15 ºCでは反対の傾向がみられた。さらに、4 ºCで180日または 270日間保存した小型の種子(0.5 cm以上1.2 cm未満)は、大型の種子(1.2 cm以上1.6 cm未満)よりも、明・暗条件どちらにおいても発芽率が高かった。このことから、オニバスは、大きさによって異なる休眠特性を持つ種子を生産している可能性が示唆された。