| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-096 (Poster presentation)

個体レベルでみたブナの開花パターンのサイズ依存的同調性

*小林誠(十日町市立里山科学館キョロロ),田辺慎一(国際自然環境アウトドア専門学校),澤畠拓夫(近畿大学・農),山岸洋貴(弘前大学・白神),永野昌博(大分大学・教育)

ブナは個体群レベルで顕著な種子生産の豊凶があり、豊作年には広範囲で同調的開花が起こることが知られている。一方で豊作年の間には小中規模開花が見られ、多数個体と同調しない開花が個体レベルでは観察される。ブナにおいて個体レベルでの連続的な開花の把握例は少ないが、開花パターンの個体性を考慮することは豊凶を資源収支の視点から理解する際に重要であり、豊凶性進化の生態学的な理解にもつながるだろう。本研究ではブナにおける開花パターンのサイズ依存的な振る舞いを8年間の開花履歴から解析した。

新潟県十日町市の標高約300mの約80haのブナ主体の里山林において、生育場所・個体サイズをランダムに選んだブナ120個体(DBH:最小6.5cm、最大75.9cm)を対象に、2006年より開花状況(開花の有無)を調査した。

調査期間における開花頻度は、0回(34.2%)、1回(29.2%)、2回(23.3%)、3回(10.0%)、4回(3.3%)となり、開花頻度は個体サイズが大きいほど高くなる傾向にあった。また、開花個体における開花の連続年はほとんどが1年(89.9%)であったが、4年連続した個体(DBH:54.9cm(2013年))も1個体観察された。加えて、個体サイズが大きいほど小中規模開花年での開花も見られ、小さいほど大量開花年の限定的開花になる傾向があった。

以上のことから、資源的に余裕がある個体は開花頻度が高く、大量開花年だけでなく小中規模開花年の繁殖木をも担っていることが示唆された。このことは、個体レベルでのサイズ依存的な開花頻度の違いが、個体群としての豊凶パターンに影響を与えることを予測する。今後は成長量や気温に対する開花応答の個体差を考慮し、開花頻度に与える影響を検討したい。


日本生態学会