| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-099 (Poster presentation)
アマナはユリ科の多年草で、展葉および開花が早春のみに生じ、夏季には地上部が消失する春植物である。アマナの繁殖様式については、種子繁殖のほか鱗茎から生ずるドロッパー(紐状体)の先端に娘鱗茎を生じさせる栄養繁殖を行うことが知られている。しかし、この繁殖様式の違いが、どのような生育段階において生じるのかについては十分明らかとなっておらず、種子繁殖における結実特性も把握されていない。また、一般に、栄養繁殖由来の新規加入個体は実生個体に比べて大型で、定着率も高いことから、アマナの繁殖における種子繁殖と栄養繁殖の配分が、アマナ個体群のサイズ構造と動態に反映されていることが考えられる。そこで本研究では、アマナの繁殖特性を明らかにするとともに、繁殖特性が個体群のサイズ構造および維持機構に及ぼす影響を検討することを目的とした。
繁殖特性に関する調査として、長野県の1集団を対象に、開花期に鱗茎まで掘り上げ、親鱗茎サイズ(長径と短径)、葉数、開花数、ドロッパーの本数を計測し、開花期後、娘鱗茎のサイズを計測した。種子繁殖特性について、開花率、開花個体の結実を調査したほか、袋がけ実験(強制自家受粉)を行った。個体群のサイズ構造については、長野県の3集団で、葉長と花数を計測した。
その結果、観察された繁殖様式は種子繁殖と娘鱗茎の生成による栄養繁殖で、種子繁殖個体はドロッパーを形成しなかった。種子繁殖個体、栄養繁殖個体、未繁殖個体間では有意に鱗茎の平均直径が異なり、また、その順に鱗茎直径が大きかった。袋がけ実験では、強い自家不和合性が示唆された。サイズ構造では、調査した3集団とも、娘鱗茎の平均直径から推定される葉長サイズの個体が多い一山型のサイズ分布を示した。以上から、調査を行った集団では、アマナは鱗茎サイズに依存して繁殖様式を変化させていること、また、主として栄養繁殖により個体群を維持している可能性が示唆された。