| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-101 (Poster presentation)

分布域が異なるユリ属3種(ヒメサユリ、ヤマユリ、タカサゴユリ)の個体群と繁殖特性

河原崎里子*1・小川みふゆ2・苫米地聖3・堀良通3・菊地賢4・大曽根陽子14 (1首都大 2環境研 3茨城大 4森林総研)

ヒメサユリとヤマユリは日本の固有種である。ヤマユリは本州の中央部(関西から東北南部)を分布域とし、二次林林床や刈り払いの行われた田のあぜ、高速道路の法面などに出現する。ヒメサユリの分布域は狭く、福島県会津地方と、それと県境を接する新潟県、山形県、宮城県南西端部の多雪地帯である。山頂の雪田草原や雪食地形のガレ場など自然度が高い生育地の他に、刈り払いを行った草地に出現する。タカサゴユリはおよそ100年前に台湾から園芸用として導入され、野外に広がった外来種である。西日本全域に生育し、東日本は太平洋側を北上し、宮城県周辺まで見られる。

個体群の密度は、タカサゴユリでは、開花個体、非開花個体、実生順に1 m2あたり6.4、6.5、168、ヒメサユリは1.3-2.0、1.4-4.4、2.0-35.4、ヤマユリは2.6、1、2.4であった。蒴果あたりの種子数と個体あたりの着花数も異なり、個体あたり生産種子数は、タカサゴユリ1211個、ヤマユリ737個、ヒメサユリ603個であった。個体の乾重器官分配は、開花個体では、タカサゴユリが地下器官への分配が最も少なく28%、ヤマユリ、ヒメサユリは56、60%であった。

タカサゴユリは種子繁殖に投資し、多くの種子を生産、密度の高い個体群を維持し、散布する能力が高く、新しい分布域を獲得する。ヤマユリ、ヒメサユリは翌年の成長への投資をが大きく、同じ生育地に長く留まることができる。ヒメサユリでは、多雪の成長期間の短い生育地への、ヤマユリでは光資源が潤沢でない生育地での適応と考えられる。ヤマユリ個体群は開花個体を中心とした中サイズないし大サイズの個体とごく小さな実生で構成されていて、ヒメサユリとは個体群の維持の仕方が異なると考えられる。


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