| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-104 (Poster presentation)
植物にとって効率の良い光獲得はその植物の成長量に大きく関与する。Climbing Plant(つる植物)は、自立植物に比べて茎への投資量を節約し、より上方向へ成長する植物群である。そのため、自立することはできないが、光を得るために様々な付着器官を獲得しており、これを近隣の植物に付着させ、成長する。つまりClimbing plantにとって、この付着器官は生育に重要な意味を持つと言える。ヤエムグラ(Galium spurium)は、田畑や道端などでよく見られる一年生草本であり、Climbing Plantの一つである。茎と葉の裏側に細かい刺を持ち、特に葉の裏側の刺が様々な基物に強くひっかかる。この刺を近隣の植物等にひっかけ、よじ登るように成長する。先行研究では刺の機械的な機能が解明されている。しかし、刺を用いたよじ登る成長戦略が、ヤエムグラ個体の成長にどのように関係しているのかは明確にわかっていない。これを明らかにするためには、刺のない近縁種との成長戦略を比較する必要がある。そこで本研究では、ヤエムグラと同属のクルマムグラ(G. japonicum;刺無・自立・多年生、オククルマムグラ(G. trifloriforme;茎にのみ少し刺有・自立・多年生)、オオバノヤエムグラ(G. pseudo-asprellum;茎と葉に多く刺有・よじ登り・多年生)を用い、茎と葉の外部形態およびバイオマス投資量の比較を行った。この結果、刺を持ちよじ登り成長を行うヤエムグラとオオバノヤエムグラは自立成長を行うクルマムグラとオククルマムグラに比べて、①シュートの全長が長い、②葉の付く間隔が広い、③茎が重いことがわかった。①より刺が上方向への成長を促進し、②より付着範囲を拡大している可能性が示唆されたが、③についてはさらに植物体全体に対する葉または茎へのバイオマス投資量の比率の比較や茎の機械的構造、生活史等を考慮する必要がある。