| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-107 (Poster presentation)

オオヤマオダマキにおける自家受粉の役割:操作実験による検証

板垣智之,小黒芳生,酒井聡樹(東北大・院・生命)

野外の植物の繁殖成功には、様々な要因の異なる影響がおよぶ。花形質がポリネーターの誘引・受粉成功などに、集団内の開花時期・花密度やポリネーターの豊富さ・行動が近親交配などに影響すると考えられている。

本研究では、どのような要因が繁殖成功に影響しているかを明らかにすることを目的とし、個体ごと・花ごとの訪花量・訪花行動、果実・種子生産を調べた。除雄処理により自家受粉を防ぐことで、自家花粉による種子生産への貢献と他家花粉獲得への影響、それらが花密度によってどう異なるかを調べた。さらに除雄と袋掛けを合わせて行うことで、繁殖成功と訪花回数との関係を調べた。材料は自家和合性多年生草本オオヤマオダマキで、開花時期と集団の密度が異なる青森県の2ヶ所の野外集団で行った。繁殖成功に影響しうる要因として、集団内および対象個体の近接個体数・花数、個体ごとの同時開花数、花ごとの開花フェノロジーを調べた。

その結果、2集団とも、無処理の花よりも除雄処理の花、さらに除雄+袋掛け処理の花で、花あたり種子数が少なかった。また、無処理の花では、開花時期が遅いと花あたり種子数は少なく、近距離に花数が多いと種子数が多い傾向があった。一方、除雄処理の花では、開花時期が早いと種子数は少なく、近距離に花数が多いと種子数が多い傾向があった。さらに除雄処理の花の方が無処理の花よりも種子数のバラつきが多かった。これらの結果から、複数回の訪花による他家花粉獲得のみでなく自家花粉も高い種子生産に必要であること、それは特に集団の花期前半など交配相手やポリネーターが少ない時期に重要な役割を持つことが示唆される。


日本生態学会