| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-110 (Poster presentation)
雌雄異株植物の花では、雄蕊や雌蕊だけでなく、大きさ、蜜量、匂いなど様々な形質に雌雄差が見られることがある。これらの形質は、花と花を利用する送粉者や花食者との相互作用の中で進化してきた可能性が考えられる。本研究では、雑居性雌雄異株植物の常緑低木、ヒサカキを材料に花形質と訪花昆虫の調査を行った。発表者のこれまでの研究から、ヒサカキの花の防御形質には雌雄差があり、雄花に偏った花食害が生じていることが明らかになっている。そこで、花の雌雄差に着目し、どのような花形質が雌雄で異なるのか、昆虫の訪花頻度は雌雄の花で異なるのかを調査した。
その結果、花食者が雌の花より雄の花を多く食害していたのとは逆に、送粉者は雄より雌の花により多く訪れる傾向にあること、雄花は雌花より大きいが、蜜量は少ないことなどが明らかになった。これらの結果から、ヒサカキの訪花昆虫は花の大きさではなく、蜜などの報酬量に応じて訪れる花を決めていることが推測される。雌雄異株植物では、ヒサカキ同様、雄の花が雌や両性の花より大きい場合が多い。これは、雌以上に、雄では送粉者が訪れるほど繁殖成功が増加し、送粉者の誘因効果が高い大きな花が雄で進化するためと考えられている(Bell 1985)。しかし、今回の調査では、ヒサカキの雄の大きな花は送粉者をより誘引する効果を持たず、この仮説に沿わなかった。