| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-113 (Poster presentation)
フサヒゲルリカミキリは,カミキリムシ科フトカミキリ亜科の甲虫であり,日本国内ではかつては広い範囲で生息が確認されていたが,近年は岡山県の蒜山高原と長野県の霧ヶ峰高原の2か所でしか生息が確認されていない。岡山県では平成16年に指定希少野生動植物の第1号として指定され,現在は地元住民の協力の下に監視活動が続けられている。絶滅のリスクを抱えており、保護と共に増殖ための基礎資料の収集が急務となっている。
ユウスゲを食草としており,ユウスゲが生育する湿性草地に生息する。山焼きによって維持されてきた半自然草地でユウスゲを食草として生息するこの昆虫の個体群動態について,発生した成虫の個体数,ユウスゲの花茎数やユウスゲの花茎につけられた産卵孔数との関係を考慮に入れながら,平成17年から9年間にわたり採草地内に設けた直径50m程度の範囲の4か所の調査区で調査を行い,それぞれの関係について考察した。
その結果,天候により1日しか実施できなかった平成23年を除いて毎年実施した2日間の調査期間に確認できた個体数は,増減を繰り返しながら7~39個体までの範囲で変動し,平成19年(39個体)と24年(32個体)にピークとなっていたことから,成虫の個体数は周期的に変動しているのではないかと考えられた。個体数が増えた場合には産卵孔数が増える傾向は見られたが,産卵孔数が多くても翌年の個体数が増加するとは限らなかった。
ユウスゲの花茎数は,産卵するのに利用された花茎数が最大で4割程度であった他は2割かそれ以下の年が多かったことから,産卵に利用される花茎数は十分にあることが明らかになった。ユウスゲの花茎は山焼きや草刈りによって増えるが,山焼きや草刈りを毎年継続しても増加させる効果はないことも明らかになった。