| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-115 (Poster presentation)

受粉花粉の直接遺伝解析に基づくアゲハチョウを介した送粉パターンの解明

*廣田峻,新田梢(九州大・生物),陶山佳久(東北大・農),安元暁子,矢原徹一(九州大・生物)

植物にとって,送粉は種子散布と並ぶ貴重な分散機会である。このうち,種子散布はしばしば空間的に限定されるため,送粉は地域的なスケールで遺伝子流動における大きな役割を担っている。ただし,動物媒花においても送粉者を介した分散は局所的な可能性がある。なぜならば,訪花毎に持ち越される花粉は急激に減少するからである。このような花粉の持ち越しは,集団内・集団間の遺伝子流動に大きく影響するため,進化や保全など様々な視点から注目されてきた。しかし,現在の研究は,訪花成功と花粉の授受成功がほぼ同義な送粉者と植物の組合せに限られている。そこで本研究では,ハマカンゾウとその送粉者であるアゲハチョウについて,花粉一粒ジェノタイピング技術を用いて遺伝子花粉持ち越しパターンを実測した。その結果,花から持ち出された花粉は,その後10花訪花する間にほぼ減衰していた。訪花時に送粉がおこるかどうかという送粉確率の方が,送粉成功時に柱頭に受け渡される花粉数よりも早く減衰していた。送粉確率はDonorの直後に訪花した花でも,2割程だった。花形質に関しては,葯サイズおよび雌蕊長,花冠の向きが送粉確率に,雄蕊長および雌蕊長,花冠向き・奥行きが送粉成功時の授受花粉数に影響していた。短い雌蕊をもち上向きの花の方が花粉を受け取る確率が高く,浅い花冠を持つ花でより多くの花粉が運ばれていた。花粉持ち越しの減衰率は,先行研究で示されているマルハナバチやハチドリよりも高く,送粉確率も小さかった。これらの傾向は,送粉者の花粉付着部位が翅であり,翅上の付着場所にバラツキが大きいこと,実験に用いたナミアゲハは小型であるため,そもそもの送粉効率が低かったことが理由として考えられる。


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