| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-125 (Poster presentation)
花における左右相称性や花筒は、花粉媒介能力の高い訪花昆虫に特殊化するために進化したと考えられている。高山帯では、花形態によって訪花昆虫機能群が異なり、花筒持つ植物がマルハナバチ類を、持たないものがハエ目昆虫に訪花されたる事が報告されている。しかし、これらの訪花昆虫機能群間で花粉媒介能力に差異があるのかを明らかにした研究はない。そこで、本研究では、高山帯の開花植物における訪花昆虫相、訪花昆虫の体表付着花粉相、柱頭付着花粉相の解析を行うことにより、各訪花昆虫機能群(マルハナバチ類、ハエ目類)がどの程度送粉に寄与しているかの検証を行った。ここでは、送粉者の異種間移動(体表付着花粉多様性)と送粉への影響(柱頭上の付着異種花粉多様性)を明らかにすることを目的とした。
本研究は2011~2013年8月に立山高山帯で36植物種について訪花昆虫の捕獲及び、柱頭採取を行った。訪花昆虫は、花筒を持つ植物種にはマルハナバチ類、花筒を持たない植物種には小型のハエ目が主に訪花していた。体表付着花粉より、マルハナバチには複数種の花粉が多く付着し、小型のハエ目の体表には少量の花粉が付着していた。さらに、訪花昆虫数に占めるマルハナバチの割合が多い植物種では、柱頭付着自種花粉率が低いことが明らかになった。小型のハエ目の多く訪花する植物種で、花粉が1粒も付着していない柱頭が多く存在していた。一方で、マルハナバチ媒植物では受粉の見られない柱頭はほとんどなく、マルハナバチの花粉媒介能力の高さが伺えた。