| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-126 (Poster presentation)
多数の小花によって形成される総状花序では、小花は一斉に開花せずに基部側から徐々に開花していく。訪花昆虫にとっては、後から開花した小花は花序の上部に存在するため目立ちやすく、採餌しやすい部位にあると考えられる。マメ科植物であるムラサキツメクサも総状花序を形成するが、開花は基部の片側から始まり、徐々に上部へと咲き上がる特徴をもつ。本種は、開花小花数が少ない初期段階には、花茎が屈曲して花序が傾き、基部近くの小花を上空へ呈示していることが明らかになっている。花序は開花数の増加に伴って垂直状態に近づくため、上空から飛来する訪花昆虫へ呈示される部位は変化していく。そのため昆虫種によっては、花序の開花状況や花序の傾きを判断して、採餌する部位を変更している可能性がある。本研究では、ムラサキツメクサに訪花する昆虫種を対象に、開花段階によって採餌を開始する部位に違いがみられるか野外調査を行なった。その結果、シロスジヒゲナガハナバチやマルハナバチ類は開花段階に関わらず、花序の基部に位置する小花から採餌を開始していた。セイヨウミツバチやアカガネコハナバチでは、採餌を開始する部位には開花段階によって違いはあったが、一貫した傾向は見られなかった。チョウ類は、常に花序の上部から採餌を開始していた。しかし、各開花段階で開花した小花の花蜜量には、差は見られなかった。以上の結果から、ムラサキツメクサに訪花する昆虫類では、種によって最初に採餌を開始する花序の部位に違いがあることが明らかになった。特にマルハナバチ類は、満開期であっても花序下部への強い選好性を示し、頑なに採餌を開始する部位を決めていると考えられる。