| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-129 (Poster presentation)

ヒメクロオトシブミの揺籃サイズの樹種による違い

*水谷誠(近畿大学・農),深沢(小林)知里(東北大学・生命科学),河内香織(近畿大学・農),澤畠拓夫(近畿大学・農)

オトシブミ類の揺籃はメスが1枚の葉を傷つけて萎れさせた後に卵を産みつけ、巻き込み、密閉することで形成される。揺籃は植物葉とオトシブミの相互作用による産物であると言えるが、オトシブミによる葉の加工技術の進化に関しては行動学的観点から研究が進められている一方、植物の形質的な違いに応じた揺籃作成戦略については未解明の部分が多い。本研究では葉の形質の違いがオトシブミの揺籃の形態および成虫サイズに及ぼす影響について明らかにするために、広食性種ヒメクロオトシブミがハリエンジュ、ノイバラ、ミツバツツジに形成した揺籃をランダムに採集し、揺籃のサイズ(高さ・幅)と出現した成虫のサイズ、若葉の硬さと面積について調査を行った。その結果、ハリエンジュでは小型の揺籃のみが形成されたが、他の2樹種では小型から大型の揺籃まで大きさがばらついた。ハリエンジュの葉は他の2樹種に比べて葉の面積が最も大きく、有意に柔らかかった。また、出現した成虫サイズは樹種間で有意な差はなかった。以上の結果から、葉の柔らかいハリエンジュでは他の2樹種に比べて大きな葉をコンパクトに折り込むことができるため大きな葉から小さい揺籃を作成でき、揺籃が小さくても資源量として劣る訳ではなく、これが成虫サイズに反映されたと考えられた。逆に葉の硬いノイバラでは葉をコンパクトに折り込みにくいので、揺籃が大型になったと考えられた。揺籃は幼虫期の餌であると同時に外敵や乾燥から幼虫の身を守るための隠れ家としての機能も有することを考慮に入れると、隙間の大きい大型の揺籃よりも、葉が密に織り込まれている小型の揺籃の方が有利であり、これには葉の硬さが重要な決定要因となっている事が示唆された。


日本生態学会