| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-130 (Poster presentation)
熱帯アジアに分布するオオバギ属(Macaranga)を食樹とするムラサキシジミ属(Arhopala)のamphimutaグループの5種は,好蟻性のシジミチョウであり,アリを制御する好蟻性器官の発達の程度を種ごとに分化させることで寄主植物および寄主アリとの相互作用を多様化させた.これらのうち4種は,それぞれアリ植物オオバギ属の特定種を食樹とし,その幹内に共生するシリアゲアリ属(Crematogaster)の特定種のみと依存的に共生する(アリ絶対共生).一方,残りの1種は,非アリ植物の特定種を食樹とし,複数のアリ類と関係を結ぶ(アリ任意共生).このように,オオバギを食樹とするシジミチョウ類は,植物とアリ両方に対する特異性が総じて高く,さらに,近縁グループ内でアリとの共生様式や好蟻性形質が分化することから,多者系における寄主特異性の進化を検証する上で好適な材料である.
これまで,我々は3遺伝子を用いた分子系統解析を行い,amphimutaグループは単系統であり,約200万年前にオオバギ・アリ共生に寄生を開始したことを明らかにした.しかし,この系統樹は解像度が低く,種間の系統関係を高い確率で支持することはできなかった.
そこで本研究では,5遺伝子を用いて頑健なシジミチョウ系統樹を作成し,オオバギ属を食樹とするシジミチョウ類における好蟻性形質の進化過程を検証した.その結果,amphimutaグループの中で,アリ絶対共生から任意共生のシフト,および,好蟻性器官の消失が派生的に起こったことが示された.