| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-132 (Poster presentation)
顕花植物は送粉者と相互作用することで多様化してきたと考えられている。この多様化は様々な分類群で並行的に生じており、たとえ異なる分類群に属する種同士であっても、同一の送粉者(群)と相互作用した結果、花形質に類似性が見られることがある。このことは、植物の多様化に対して送粉者が普遍的な役割を演じてきたことの証拠であり、種間比較を行うことは植物の多様化に対する理解を深めることにつながる。異なる送粉者に適応することで花形質の変異が生じるという仮説の検証は古くからおこなわれており、植物種内において異なる送粉者に対応した地理的な花形質の変異を検出した研究は多い。一方で、複数の植物種においてそのような地理的な形質の変異が並行的に生じているかを検証した事例は少ない。本研究では、中部山岳域の広い標高帯に分布し、標高帯で異なる送粉者と相互作用する複数の植物種(ツリフネソウ、キツリフネ、ヤマオダマキ、ラショウモンカズラ、オドリコソウ、ハシリドコロ、ウツボグサ、ヤマホタルブクロ)において訪花者と花形質の地理的変異を検出し、どのような変異パターンが見られるかを調べた。その結果、ハシリドコロとヤマオダマキを除く6種において個体群によって異なるマルハナバチ種に訪花されていることが観察された。さらに、すべての種で送粉効率に影響すると考えられる花サイズに地理的な変異が見られ、その変異パターンは大きく2つに分けることができた、①送粉者との相互作用に強く影響されるパターン、②送粉者との相互作用以外の生物間相互作用(盗蜜や他植物種の存在など)に強く影響されるパターン。本発表ではこれらの変異パターンから花形質の地理的変異がどのように生じたのか考察を行う。