| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-140 (Poster presentation)
コケ植物やシダ植物など隠花植物の多くは、教科書では胞子により拡散するとされる。また、藻類とくに気生藻類は細胞そのものが受動的に移動して拡散する。一般に、胞子は小型で、長距離の分散が可能であり、新しい個体群の形成に貢献すると考えられている。一方、無性芽のような散布体は短い距離で分散され、既存の個体群の維持・拡大に貢献すると考えられている。1800年代後半から、コケ植物や藻類の散布に関する多くの研究が行われている。しかしながら、空中生物学的な観点からの隠花植物とくにコケ植物の分散について、遺伝的な背景に関する研究はほとんど行われていない。そこで本研究では、大気中に浮遊する隠花植物の散布体を捕捉して、葉緑体rbcL遺伝子および核18S rRNA遺伝子の塩基配列を使ってDNAバーコーディングを行い同定するとともに、捕捉物内の植物の構成を明らかにすることを目的とした。研究の結果、コケ植物とシダ植物、藻類のコロニーが得られた。コケ植物は42株が得られ、20種(種が未確定のものも含む)が確認された。確認された種について検討した結果、大気中には近隣地域からの短距離散布により飛来したと考えられる種だけでなく、日本以外の地域も含む遠方からの長距離散布により飛来したと考えられる種も確認された。