| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-026 (Poster presentation)

群集パターンとプロセスの類似性:岩礁潮間帯固着生物群集における推移行列を用いた解析

*金森由妃(北大・院・環境科学),深谷肇一(統数研),岩崎藍子(北大・院・環境科学),野田隆史(北大・地球環境)

固着生物群集は,全ての種が空間をめぐって互いに競合関係にあるため,古くから多種共存機構や群集動態の研究のモデル系として注目されてきた.固着生物群集の動態を表す1つの方法として推移行列モデルがあり,このモデルでは固定調査点の状態(種の存否)の推移が確率として表現される.推移行列の各要素は種の存続,置換,棲み着き,死亡といった群集構造を決定するプロセスに対応しているため,要素の時空間変動性とその要因を明らかにすることは群集動態の背後にあるメカニズムに迫る上で有効であるが,研究例は極めて乏しい.そこで本研究では,垂直方向の環境勾配と季節性が明瞭な冷温帯域の岩礁潮間帯に成立する固着生物群集を対象に,推移行列モデルを適用し,種の維持,置換,空き地への加入,種の除去といった群集プロセスの種差,潮位と季節に依存した違い,密度依存性について明らかにし,これらと群集パターンとの関係について検討することを目的とした.

固着生物の群集動態に関するデータは,北海道道東地方の5海岸25岩礁で2002年から2012年の春期と秋期の調査から得られた.各岩礁では平均潮位を挟んで縦90cm横50cmを3つの潮位に分割し,それぞれの潮位で固定調査点に出現する種を記録した.観察された種は8つの種群(優占種5種,一年生生物,多年生生物,裸地)に分け,固定調査点の占有状態の推移をdynamic multistate occupancy modelに基づいて推移確率行列を推定した.推移確率を決めるメカニズムを明らかにするために,推移確率の季節性と種の密度に対する依存性を検証した.これらの解析結果をもとに,群集プロセスと群集パターンとの関係について議論する.


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