| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-033 (Poster presentation)

厚岸湖におけるアマモ葉上生物群集の季節的な相互関係強度の変異

*百田恭輔(北大・環境), 北村武文(北大・厚岸), 濱岡秀樹(瀬戸内水研), 仲岡雅裕(北大・厚岸)

生態系のバランスは、ボトムアップ・トップダウン(BT)効果によって生物の相互関係が調節されることにより保たれている。BT効果の相対的な重要性は時空間的に大きく変異することが指摘されており、その全容の解明には長期的かつ広域なスケールでの研究がさらに必要である。現在、アマモ場の生物群集を対象とした成果は蓄積されつつあるが、その多くは特定の場所・時期における限られた成果であり、BT効果の時空間的変異の大きさとその機構については明らかにされていない。これまでの研究からは、アマモ場の葉上動物群集は多くの植食性の動物により構成されているため、特に葉上の藻類を介したボトムアップ効果による影響を強く受けることが確認されている。そこで、本研究ではボトムアップ効果の重要性に着目し、葉上動物と葉上藻類の相互関係の強度および環境要因との関連性が季節間でどのように変異するのかを構造方程式モデリング(SEM)により検討した。

調査は北海道東部に位置する厚岸湖および厚岸湾のアマモ場8か所において、2013年に6月を春季、8月を夏季、10月を秋季として、葉上生物(葉上動物・葉上藻類)の採集、海水の栄養塩濃度・水温・塩分の観測を行った。

その結果、春季から夏季には物理要因による生物群集への直接的な影響が大きく、植物と動物の相互関係にも強い関係が多く検出された。一方、秋季には環境・植物・動物の間に強い相互作用はあまり検出されなかった。また、水質に関連する要因が藻類に与える影響の強さは季節によって大きく異なっていた。本研究でみられた相互作用強度の季節変化には、物理化学環境の物理・化学環境の季節性と、生活史特性に伴う群集構成種各種の季節的消長が関与していると考えられ、その結果、ボトムアップ効果の重要性も季節によって異なることが明らかになった。


日本生態学会