| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-035 (Poster presentation)
海浜という生息場所は、砂の移動や高温、乾燥、塩水の飛沫などにさらされる厳しい環境条件に適応した特異な生物群集が成立している。海岸に生息する昆虫の多くは自然海岸に生息するが、現在、我が国では都市化および産業化に伴う沿岸地域の開発、浸食に伴い、自然海岸が依然として減少傾向にある。こうした海岸環境について近年関心が高まってきているが、残存している砂浜海岸の動植物、特に昆虫類の分布状況、生態的知見に関した報告は十分ではなく、生息調査およびデータベース化が望まれている。本研究では中田島砂丘における昆虫の分布とその要因を明らかにすることで今後の海岸保全の一助となることを目的とする。
2013年5月から11月にかけて計10回のベイトトラップ調査を行った。海浜植生帯以降に13の調査地点を設定し、各地点に4m×4mのコドラートに格子状に9個のプラスチックコップを埋設した。トラップの底にはサナギ粉と唐辛子粉を混ぜたものを入れ、埋設したトラップは翌日に回収した。また、環境要因として植被率、地表面の土壌硬度を計測し、汀線からの距離、比高のデータと合わせて相関を探った。調査の結果、44種5442個体の昆虫が確認できた。最も多く出現したのは1640個体のオオスナゴミムシダマシGonocephalum pubens であり、1429個体のオオハサミムシLabidura riparia、1249個体のハマヒョウタンゴミムシダマシIdisia ornataと合わせて総個体数の80%を占めた。クラスター分析、DCAの結果、海岸林と他の地点とでは独立した種構成であることが示唆された。上位7種における環境要因を説明変数としたGLMMの結果、海浜性のハマヒョウタンゴミムシダマシ、好海岸性のオサムシモドキは植被率、汀線からの距離に対し、それぞれ正・負の相関が見られた。