| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-037 (Poster presentation)
1940年代から90年代にかけて干拓や埋め立てなどで日本の約40%の干潟が消失し(環境省自然保護局1994)、陸域からの環境負荷の軽減など、干潟の持つ機能の劣化が懸念されている。鹿児島県は温帯域と亜熱帯域二つの気候域にまたがっており、亜熱帯域に位置する奄美大島では、近年、自然状態の海岸線が急速に失われつつある。また、現在、奄美群島は世界自然遺産登録に向けた取り組みを進めているが、この地域を含め亜熱帯域における干潟の底生生物群集を調べた研究は少ない。そこで本研究では、奄美大島の干潟において底生生物相を調べるとともに、温帯域に属する九州南部の干潟との比較をおこなった。
調査は、鹿児島湾奥の重富干潟、八代海の南に位置する出水市江内干潟、奄美大島の住用マングローブに隣接する干潟、奄美大島笠利湾奥の手花部干潟の四か所で行った。それぞれの調査地で、ライントランセクトによる底生生物の定量採集を行うと共に、底質サンプルの採集も行った。各干潟では、ラインに沿って等間隔に計24個のステーションを設定し、生物を採集した。
調査の結果、出現種数は手花部干潟で87種と最も多く、江内で40種、住用で29種、重富では23種と少なかった。しかし、出現個体数は江内、住用、手花部が300~500個体であったのに対し、重富干潟では約900個体と2倍の数が採集された。本土の重富と江内では表在性の腹足綱ウミニナ属spp.が、奄美大島の住用では埋在性の甲殻綱ミナミコメツキガニ(Mictyris brevidactylus Stimpson, 1858)が、手花部では埋在性の甲殻綱に加え多毛類がそれぞれ優占していた。これらの事から、群集の分類群組成に温帯域である九州南部と奄美大島では気候帯による違いが見られたが、出現種数・個体数にはその傾向は見られなかった。発表では、定量的に調べた群集組成やその空間分布について比較する予定である。