| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-038 (Poster presentation)

長野県中南部におけるバッタ目の過去の分布及び三峰川河川敷の生息状況

*山岸若菜(信大・農),大窪久美子(信大・農),小林正明(伊那谷自然友の会),大石善隆(信大・農)

本研究の対象とするバッタ目は分類学的研究が遅れ、地域におけるファウナや群集の分布の現状はともかくとして、過去における基礎的情報の把握も充分ではなかった。しかしながら、バッタ目の主な生息地である草地や河川敷の環境は高度経済成長期以降、急速に質的量的に変化してきており、近年、生物多様性保全を目的とした本分類群の知見の収集が課題となっている。本研究では、過去に希少種のエゾエンマコオロギ等が確認されている三峰川河川敷において、バッタ目群集と立地環境条件との関係を明らかにすることを目的とした。また、バッタ目に精通されている小林正明氏が県内で過去50年間に調査された分布データを提供して戴き、本地域における過去の情報を整理することも目的の一つとした。

調査地は天竜川合流地点から上流にかけて計10地点に、5m×5mの調査プロットを10個ずつ一列に設置した。群集調査は踏み出し法やルッキング法にて種類と個体数を測定した。ベイトトラップ法も用いた。立地環境は植生及び土質調査を実施した。群集解析にはTWINSPAN解析を用いた。

その結果、堤防上ではエンマコオロギなどの普通種、堤防内にはカワラバッタなど河川敷特有の種が出現した。礫河原を好む種が多く出現する堤防内の細粒砂の多い河川敷ではエゾエンマコオロギ等のコオロギ類が出現し、これは産卵の適地であるためと推察された。

過去のデータでは、礫質を好む種は河川敷や周辺の地点に多いことが示された。ダム造成以前又は直後の’60年代後半~70年代と、樹林化が進んでいる現在では、礫質を好む種は減少傾向にあることが推察された。河原特有の種を保全するには礫河原の環境を維持していく必要のあることが確認された。


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