| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-043 (Poster presentation)
世界各地で人間活動による天然林の断片化が生じており、森林性鳥類にとって大きな脅威となっている。先行研究の多くは、農地で囲まれた断片林を対象としたもので、鳥類に影響を与える要因は断片林の周囲の環境を含む景観レベルでの要因が主であったが、残存林の林分レベルの要因も重要と考えられる。また、日本の森林景観は、主に広葉樹からなる天然林が針葉樹からなる人工林によって断片化された構造が多く見られる。このように人工林に囲まれることが天然林での鳥類に与える影響は不明な部分が多く、景観レベルと林分レベルの両方の要因を考慮する必要がある。本研究は、針葉樹人工林によって断片化された広葉樹林に生息する鳥類に対する景観・林分各レベルの要因の影響について、比較・評価を行った。調査地は茨城県北部の針葉樹林に囲まれた広葉樹林で、周囲の広葉樹林率の異なる11か所の林分を設定した。各調査地では鳥類相調査を2013年5~11月にかけて、毎月実施した。また、景観レベルの要因では調査地周辺の広葉樹林率と針葉樹林率を、林分レベルの要因では餌資源量(果実生産量、鱗翅目幼虫資源量)を毎月測定した。
調査では、計31種549個体の鳥類が記録された。解析の結果、調査地周囲の広葉樹林率は鳥類の種数・個体数に負の影響を与えた。これは調査の実施年は果実が豊作であり、鳥類は特定の広葉樹林を利用しなかったことが影響していると考えられる。また、餌資源量は鳥類の種数・個体数には影響しなかった。しかし、景観・林分レベル共に種毎では有意な影響を示す種もみられ、種によって異なる反応が示された。以上から、鳥類の生息地の保全を考える際には、種毎の特性を考慮する必要性が示唆される。