| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-044 (Poster presentation)

水田動物群集のレジリエンス−津波被害からの回復とその影響要因−

*鈴木朋代,向井康夫,牧野渡,占部城太郎(東北大院・生命)

東北地方太平洋沿岸域の生態系は、2011年3月11日に発生した東日本大震災とそれに伴う津波により大きな被害を受けた。それらの被害を受けた生態系のひとつに水田がある。日本の代表的な二次的自然のひとつである水田は、稲の生産だけでなく、洪水の緩和やダム機能、野生生物への生息地提供など多面的な機能をもつ環境である。宮城県では、県内の総水田面積の約11.5%にあたる12,685haの水田が津波の被害を受けた。被災した水田では、段階的に復旧作業が行われ、これまでに約6割の水田で作付けが行われるようになった。一部の被災水田は復旧され、稲作の場としての機能は回復したが、生息地提供機能が回復したかは明らかでない。そこで本研究では、津波が水田の生物群集に及ぼした影響と、復旧に伴う水田の生物群集の回復過程を明らかにすることを目的に、野外調査を行った。

2012年と2013年に、宮城県の6地域で被災後復旧され、作付けが行われた水田(被災水田)と、それに隣接する被災を免れた水田(対照水田)で、大型水生動物の調査を行った。調査には、Suzuki & Sasaki (2010) に準拠した市民参加型の手法を用いた。

その結果、2012年度には、合計96タクサが確認され、対照水田のタクサ数の約8割が被災水田で見られた。このことから、水田の復旧により、被災水田における生息地提供機能は回復したことが示唆された。しかし、対照水田に比べ被災水田におけるタクサ数や発見頻度は少なく、種構成も異なっていたことから、水生動物群集は未だ回復途上にあることも示された。2013年度には、対照水田のタクサ数の約9割が被災水田で見られ、発見頻度も増加していることが確認された。本発表では、これら水生動物群集の回復の程度と、その影響要因について発表する。


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