| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-045 (Poster presentation)

トカゲは蝶の捕食者か?

*太田真人(龍谷大・院・理工),東郷有城(龍谷大・院・理工),小澤元生(龍谷大・院・理工),満尾世志人(龍谷大・理工),遊磨正秀(龍谷大・理工)

蝶成虫の主な餌となるのは花の蜜や樹液であり、生態系の中では一次消費者にあたる。また針などの外的武器を体に持たないため鳥やカマキリ、トカゲなど多くの動物や昆虫に対して被食者側に位置付けられている。そんな蝶の翅には傷が付いていることが観察をしていると多く見られる。この傷はビークマークと呼ばれており、捕食者によって攻撃を受けたが捕食されずに逃げ切った個体に付いているとされている。つまりビークマークは攻撃回避履歴であるという特性から捕食圧の指標として利用可能とされている。このビークマークをつける主な捕食者は鳥やカマキリだと考えられてきた。しかし、トカゲが蝶を襲った際にも翅に傷が付き、またトカゲが付ける傷は鳥が付けるV字型の傷とは異なり波型であるという報告がある。鳥とカマキリが付けたとされるビークマークが捕食圧の指標であることは論文などによって発表されているがトカゲの付けたとされるビークマークについては捕食圧の指標となるか検証が行われていない。そこで本研究ではトカゲが付けたとされる形のビークマークとトカゲの密度を比較することによって捕食圧の指標として利用できるか検証を行った。

調査は滋賀県東近江市河辺いきものの森においてルートセンサスを用いて行った。約2kmのルートを一本設定後、そのルート上で観察できた個体について種、ビークマークの有無を記録し、GPSで位置情報を記録した。個体は出来る限り一眼レフカメラで撮影し確認を行った。蝶類調査と同時にトカゲ類の種を記録した。

調査月ごとの蝶のビークマーク率とトカゲの個体数密度を比較した結果、正の関係が見られたことから波型のビークマークからトカゲが蝶にかける捕食圧が評価できることが示された。


日本生態学会