| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-046 (Poster presentation)
水生動物各種の移住と消失によって起こる群集の遷移パターンを明らかにすることは,生息場所の創出による種多様性保全の基礎情報として重要である.本研究では,水生昆虫群集の初期遷移パターンとそれに及ぼす周辺環境の影響を明らかにするために,大阪府内の都市域(2013年)と里山(2012年)にそれぞれ12個の人工池(220 L,深さ20cmのプラスチック容器)を5月と7月(M池とJ池)に6個ずつ設置し,11月まで水生昆虫とその食物資源について調査した.また,池間の種数,バイオマスの違いはANOVA,種構成の違いとその決定に関与した種はそれぞれPERMANOVAとSIMPERにより解析した.
調査の結果,里山と都市域の人工池(M池)では,それぞれ30種のべ36,451個体,26種のべ64,248個体の水生昆虫がみられた.種数はM,J池の設置後,里山ではすぐに増加して同水準で推移し,都市域ではゆるやかに増加して秋には同水準で推移したが,それぞれ池間の種構成には違いがみられた.この違いに影響したのは,里山ではJ池のみでみられたチビゲンゴロウ幼虫やM池のみでみられたショウジョウトンボ,都市域では秋にM池で多くみられたショウジョウトンボやJ池で多くみられたタイリクアカネなどであり,種ごとに出現する遷移ステージが異なることが示された.
以上のことから,里山と都市域のいずれにおいても,人工池の水生昆虫群集は季節変化の影響を受けながら速やかに遷移することが明らかになった.設置場所間で比較すると,里山の方が移住する種が多く,種数の増加もより速やかに起こり,水生昆虫と付着藻類のバイオマスも常に大きかった.また,都市域の方がより分散能力の高い種が優占し,種構成も異なった.これらは,里山と都市域における周辺環境の水生昆虫の種多様性の違いを反映していると考えられた.