| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-039 (Poster presentation)
同じ広葉樹林内であっても近傍が人工林に囲まれる場合と、広い面積で広葉樹林が残る場合では、移動性が低いとされる森林内の土壌動物群集の構造に違いがあるかも知れない。この研究では広葉樹林の土壌動物群集の構造と、調査地の周囲の広葉樹林の面積の関係を考察した。
茨城県北茨城市、高萩市の広葉樹林13林分に調査地点を設置し、大型土壌動物と中型土壌動物のトビムシを採集した。各地点の周囲(5 or 10haの円内)の広葉樹林の面積率は約15-100%の幅を持つ。各地点間の空間的自己相関の土壌動物群集への影響を解析するため、主成分分析とPrincipal coordinates of Neighbour Matrixを用いて、調査地点の座標から空間関係を示す複数の変数を抽出した。抽出した変数のうち、主成分分析の第一主成分(PCA1)が土壌動物群集の構造をよく説明した。そこで、PCA1を含めた上で、周囲の広葉樹林面積が土壌動物群集の構造を説明するかを解析した。大型土壌動物群集の目レベルでの構造は周囲の広葉樹林の面積では説明されなかった。トビムシの個体数は周囲の広葉樹林の面積よりも植物群集の組成や堆積有機物量がより良く説明した(GLM, P<0.05)。また、トビムシの種数や均衡度指数は周囲の広葉樹林の面積によって説明されなかった(GLM, P>0.05)。さらに、トビムシ群集の組成は林床有機物層の含水率によって説明された(Distance based Redundancy analysis、 P<0.05)。以上から、土壌動物群集は周囲の広葉樹林面積よりも、調査地間の空間的自己相関、その調査地点自体の植物群集の組成、堆積有機物量および水分状態等の影響を大きく受けていると考えられた。