| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA3-040 (Poster presentation)
マレーシアの熱帯林では商業伐採が盛んに行われており、生物多様性への影響が懸念されている。中でも小型哺乳類は非常に高い種多様性を持っており、その保全は重要である。また、小型哺乳類は短期間で個体数を変動させ、森林の微環境の変化の影響を敏感に受けることから、伐採の影響を評価するのに適した生物群である。本研究では半島マレーシア北部のテメンゴール保護林において、自動撮影カメラを用いて通常伐採区、低インパクト伐採区、天然林区の3つのプロットを作成し、伐採方法の違いと林道の建設が小型哺乳類の群集構造および出現した各種に与える影響を明らかにした。
小型哺乳類の出現回数をもとに除歪対応分析を行った結果、群集構造レベルでは天然林区と2つの伐採区の間には大きな差が見られたが、通常伐採区、低インパクト伐採区間では明確な差が見られなかった。また、通常伐採区、低インパクト伐採区ともに林道付近の群集構造が天然林区と最も異なっていた。
小型哺乳類各種への伐採方法と林道の影響を多重比較(U検定、ホルム法)により検定した結果、出現回数の多かった5種のうち、4種で林道の距離に依存して出現回数が大きく変化しており、林道の影響が大きいと分かった。例えば、本来この地域に生息していないクマネズミ属 (Rattus spp.)は林道周辺のみで出現したことから、林道が外来種の侵入を促していることが示された。一方、オナガコミミネズミ(Leopoldamys sabanus)の出現は森林内に限定されており、森林から一定の距離(75m以内)が確保されていることがその生息域の必要条件であることが分かった。
以上より、伐採と林道の建設は小型哺乳類の群集、種レベルで大きな影響を与え、外来種の侵入など不可逆的な変化を引き起こすことが分かった。一方で、伐採方法の違いが小型哺乳類へ与える影響は限定的であることも明らかとなった。